Presented by株式会社協立商会                                                            第74回ピアノのゆふべ                                                                                                                                       夜空に耀う祈りの調べピアノ伊藤悠里

喜び、悲しみ、穏やかさ、厳しさ、そして情景などを感じながら、お聴きいただけたら嬉しいです。 寒い中、沢山のお客様にお越しいただきとても嬉しかったです。 録画配信していただくことによって、遠方で 応援してくださる方々にも音楽をお届けすることができて幸せに思います。 これからも自分が大切に思う曲や、弾く機会に恵まれた曲に毎日向き合っていけたらとても嬉しいです。!

プロフィール

ピアノ 伊藤 悠里

上田高校卒業後渡米し、ボブ・ジョーンズ大学ピアノ科入学。学内コンクール優勝。三年次、ソリストとしてオーケストラと共演。卒業後、サウスカロライナ州立大学院ピアノ科にてスタンウェイピアニストのマリーナ・ロマゾフ氏に師事。一時帰国時にリサイタル開催。グースマンピアノコンクール3位、日本クラシック音楽コンクール5位(1~3位なし)、日本奏楽コンクール3位等受賞多数。2019年、信州国際音楽村にてリサイタル開催。教会音楽に関係するピアノソロ曲に関心を持ち、レパートリーを充実させている他、ハーバード大学の神学・音楽講座をオンラインで受講する等、幅広く研鑽を積んでいる。佐久大学信州短期非常勤講師。

演奏曲

モーツアルト(リスト編曲)/レクイエムより「涙の日」
レクイエム(死者のためのミサ曲)はモーツァルト晩年の作品です。まさにこの第8番ラクリモーサ(涙の日) はモーツァルトが最後に手掛けていた作品と言われており、モーツァルトの亡くなった後、弟子の手によって 14曲から成るレクイエム全体が補筆完成されました。独唱、合唱、そしてオーケストラの構成の壮大な曲で すが、今回はリストがピアノソロ用にアレンジした涙の日を演奏いたしました。裁きの日の厳しさ、そしてこ ぼれ落ちる涙のような美しくも悲しい、天才モーツァルトだからこその表現で、一度聴いたら忘れられないよ うな強烈な音楽です。涙の日で歌われる歌詞の日本語訳は以下の通りです。 《涙の日、その日は罪ある者が裁きを受けるために灰の中からよみがえる日です。神よ、この者をお許しくだ さい。慈悲深き主、イエスよ、彼らに安息をお与えください。アーメン》

メシアン/「幼子イエスにそそぐ20の眼差し」より
フランスの作曲家、メシアンによる、とても繊細な曲です。少し曖昧ですが、楽譜には所々に情景の説明があ り、「ゆりかごの中の神のテーマ」、「庭」、「口づけ」、「口づけの影」などと書かれています。不協和音ばかりだ けれど美しい絶妙な音色の使い方は、まるで近代美術の絵画のような印象を受けます。中間部、不協和音で激 しく盛り上がった後、急に美しい響きのメロディーに変わるところに「口づけ」と記されています。また、鳥 に大変興味を持っていたメシアンらしく、所々に鳥の声らしい音も散りばめられています。

リスト/「詩的で宗教的な調べ」より第3番孤独の神の祝福
リストはハンガリーの作曲家でピアニストとしても大変優れた音楽家でした。自身のピアノの技術が存分に発 揮できるような技巧的で華やかな曲を数多く作っています。ピアニストとして人気が高く、若いころはスター のような華々しい生活を送っていたようです。 若いころからカトリック信仰を持っていたようですが、晩年には僧籍に入るなど、宗教的な生活を送るように なり、宗教的な作品も多く残しています。 「詩的で宗教的な調べ」は、リストが30代後半から40代前半の頃の作品で、全10曲から成るピアノソロ の曲集です。第3番である「孤独の中の神の祝福」は、一人静かに心穏やかな時に神からの祝福が天から降り 注いでいるかのような大変美しく穏やかな曲です。

撮影日:令和5年1月27日